猫の話2〜続き。
マリが家から出て行ってしまった。普段から、なるべく家からは出さないようにしていたけど、ゲージ飼いをしている訳では無いので、戸が開いていると出て行ってしまう。
普段は、家の庭で草を食べたり、日向ぼっこをしたり。家の敷地内から出ることはない。呼べば帰ってくるし・・・。でも、その日は帰ってこなかった。
心配して、何度か近所を回って探したけれど。何処にも居ない。マリの性格上どこか遠くに行ってしまうことなんてあり得ない。でも、帰ってこない。何日も何日も帰ってこない・・・。
あれよあれよと言ううちに1ヶ月が経ち。旦那さんに
『そろそろ諦めろ』
と言われた。
『きっと野良猫と間違われて、山にでも捨てられちゃったんだよ。』
って。猫が嫌いな人は、野良猫がいると罠を仕掛けたりして捕まえて、山に捨てに行く。野良猫は、自分の家の庭や畑を荒らすから。マリだったらすぐに捕まっちゃうかも。人間に慣れているし、知らない人が近づいて来てもきっと警戒しないだろう。
よく聞くのが、猫の縄張り。野良猫の縄張りに入ってしまうと、そこから追っかけ回されて逃げる。逃げた所にも他の野良猫の縄張りがあるから、追い出される。その繰り返しをしているうちに、家に帰れなくなってしまうらしい。マリなんて、箱入り娘の飼い猫。その線もありえなくはない。でも帰って来るんじゃないかってまだ思っていた。
そんな事を考えながら、2ヶ月が過ぎようとしていたある日。居間でウトウトしていたら、金縛りにあった。霊感なんて0感。なんちゃって〜。全然そんなもんはないんだけど、金縛りにあって『動けない〜』とか思っていたら、『ニャー』ってマリの声がした。
起きてから、マリを探したけど何処にもいなかった。その事があって、マリは最後にお別れを言いに来たんだなって。諦めが着きました。気が重かったけど、やっとマリのトイレを処分する決意がついた。今度の休日の日にでも片付けようって。トイレを片付けるってことは、マリとの最後の別れの儀式みたいで嫌だったから、ずっと避けていたんだけど。
そんな事があった次の日の夜。旦那さんと子供達とテレビを見ながら家族団らんしてたら、外から変な声が聞こえる。かすれてて良く聞き取れないけど・・・。
『ん?猫の声?』
不思議に思って、外を見た。猫が居る。一目でわかった。マリだ。マリが帰って来た。ガリガリに痩せこけて、ボロ雑巾みたいになって・・・。声なんか出ないのに、一生懸命鳴いている。慌てて抱きかかえたけど、軽い軽い。そして汚いから、すぐにお風呂に連れて行って洗ってあげた。ちょっと手荒だったかもしれないけど。
後ろで旦那さんが、何度も
『マリじゃない。違うどっかの野良猫だ。』
って言ってたけど・・・。いや私には、分かるのよ。マリと他の猫の違いなんてすぐにね。勿論タヌキと猫の違いもね。
2ヶ月ぶりに帰って来たマリは、背骨が浮き出ていて、声も出ない。いつもの餌は”カリカリ”だったけど、その日から少しの間缶の柔らかい餌にしてあげた。
久しぶりのご馳走なのか、凄い勢いでたいらげた。よっぽどお腹が空いていたんだろうね。何処で何をしていたのか、マリに一体何があったのか凄い気になったけど、それはマリにしか分からない。でも一つ分かるのは、家に帰りたくて帰りたくて頑張って帰って来たんだろうね。声が出なくなるほど、私の事呼んだんだろうね。そう考えると、胸が痛くて苦しくなった。それと同時に、よく頑張ったねって。褒めてあげた。
マリはあれよあれよと元気になった。見た目も前のマリに戻った。むしろ少し太ったんじゃないかと言うぐらい。元気になって本当に良かった。その頃マリは私と出会ってから約12年。もうえらいお年寄り。もう家出をする事もなければ、毎日のんびりと過ごしていた。そしてこの頃三男が産まれた。
マリは長男が大好き。まだ小さい次男は、マリの尻尾を引っ張ったり乱暴だったし、三男も訳わからないから、マリの毛をむしりまくる。でも、マリはそんな乱暴な事をされても、「ぎゃー」って鳴くだけで、子供達をかじったり引っ掻いたりしなかった。
私の事は、たまに噛む事があったけど、それは甘噛みだったし、愛情表現だと私は勝手に思ってる。長男は、マリに乱暴しなかったから、よく一緒に寝ていた。気が付けば、長男に寄り添っていた。そんな光景を、思い出すとほっこりする。
冬の寒い時期に寝ていると、布団の中に入れてってよく顔を覗かれて、そのヒゲの痒さでマリが来た事が分かって、布団に入れてあげてた。布団に入ると、ずーっと「ゴロゴロゴロゴロ」言ってたっけ。
いい思い出だけじゃなくて、勿論悩みもあった。年をとるに連れて、ゲロを吐く事が増えた。猫は、毛づくろいするから、胃に毛が溜まってムカムカするみたいで、外に出ては草を食べて、よく吐いていたっけ。毛と言えば、服に毛はつくし、掃除も毛が抜けるから大変だし、コロコロが欠かせなかったね。
トイレ掃除も、ある程度してはいたんだけど、仕事に育児に忙しがっててたまに忘れてしまう事があった。そんな時マリは、必ず冷蔵庫の前でウンチをした。
猫のウンチの臭いのなんのって・・・。朝それを発見した時には、「オェ」って吐きそうになりながら片付けた。おしっこの粗相は一度もした事がなかったけど。まっここら辺は飼い主の私が全て悪いんですけどね。
そんなこんなで、マリとの平和な日々がずっと続くもんだと思ってた・・・。
つづく〜。猫の話4。
コメント